インターネットやSNSが普及し、誰もが簡単に著作者になれる時代が来ました。きっと日本の全人口の99%は何らかの作品を生み出し、著作権者になっているはずです。
例えば、僕が今書いているこのブログも立派な著作物です。ツイッターのたった140文字のつぶやきも著作物なんですよ。もはや著作物じゃないものを探すほうが難しいのかもしれません。だから著作権を知らないと損する可能性もあります。
もらえるはずのお金をもらえなかったり、何気ない行為によって相手から訴えられてしまったり、、、
ということで、「18歳の著作権入門」という本を読んでみました。
素人向けに簡略化して書いてくれているので分かり易かったです。専門的なことを詳細に知りたい人には向いていませんが、概要だけさらっと確認したい人にはぴったりだと思います。
以下、僕が気になった部分のみ抜粋して紹介しますね。
そもそも著作物って何?
著作権法で保護される対象は「著作物」だけなので、著作物以外のものは誰でも自由に利用できます。ということで、どんなものが著作物なのか把握しておくことは大前提です。
著作権法の条文によると「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」となっています。うーん、抽象的すぎてよく分かりませんね笑。一応、条文には代表的な著作物が例示されています(↓)
- 言語(小説、脚本、講演など)
- 音楽(歌詞、楽曲)
- 舞踊または無言劇
- 美術
- 建築
- 図形
- 映画
- 写真
- プログラム
きっと世の中に存在するほとんどのものは上記の9つに該当します。該当しないものを探す方が難しいですよね。
ブログは「言語」、休み時間に適当に書いた絵は「美術」に含まれます。適当に口ずさんだオリジナルのメロディは「音楽」になり、スマホで撮った写真は文字通り「写真」に該当します。
ということで、カテゴリごとに著作物を判断しようとしても無理ですね。著作物の判断基準は例示されている1〜9ではなく、条文に書かれた「創作的に表現したもの」であるかがポイントになります。
昔からずっと利用されている使い古された言い回しとか、単なる事実をまとめたデータなんかは創作的ではないので著作物にはならないわけです。またアイデアも著作物には該当しません。そのアイデアをもとにして何かが作られた時に、作られた作品が著作物になります。
みんなが使っていることわざ、東京の年間降水量をまとめたグラフ、誰かが頭の中で考えていることが著作物として認められてしまったら、その後の生活はずいぶん生きづらいものになってしまいますよね泣。よくできている法律だと思います。でも著作物の要件を全部覚えるのは大変です。
世の中の大抵のものは著作物に該当する可能性があるが、一部のものは創作的ではないので著作物にならない
このくらいの理解でいいと思いますよ。以下、著作物であっても許可を取らずに無料で利用する方法を紹介するので、そっちをしっかりと覚えた方がお得です。
著作権者の許可なく利用できる条件を紹介
著作権法は著作物が無断で利用されないように保護するものですが、とある条件を満たすと無断かつ無料で利用しても良いと認めています。
それが著作権法の制限規定です。
とある条件を満たした場合に著作権者の権利を制限する規定ということです。いくつかあるので代表的なものをまとめておきます。
私的利用のための複製
これが最も身近で強力な制限規定です。知っている人も多いと思います。
- 限られた範囲内(特定少数)で使うために
- 使用する本人が複製する
この条件を守ると私的利用のための複製に当てはまります。
レンタルショップで借りたCDを音楽プレーヤーに取り込んで通勤や退勤時に聞いてますよね。あれは自分だけが私的に利用しているので著作権法に違反しません。容易に特定できる少数であればいいので、例えば家族や親しい友人と聞くために音楽をダウンロードするのもセーフですね。
一方、自分が経営するカフェでBGMとして流すためにコピーするのは著作権法違反です。不特定かつ多数のお客が聞いてしまうのでアウトになります。他には、ヘビー級の音楽好きが自分で聴くために大量のCDをレンタルし、業者にコピーを依頼した場合も著作権法違反です。「2.使用する本人が複製すること」という条件を満たしていないですね。
本を読んでいてびっくりしたのは、「私的利用のために複製する作品の入手経路は問わない」という点です。
極端な例を挙げると、違法に作成された作品を購入してコピーする行為も法律上は規制されていないんだとか。違法だと知った上で購入するのはあまり褒められた行為ではないですが、なぜか規制されていない、、、何で?
ただし、インターネットの普及によって違法アップロードが社会問題となった影響で、違法アップロードされたことを知った上でダウンロードする行為は違法となりました。でも見るだけなら適法です。違法なのはダウンロード行為であって、視聴は罰せられないのです。なんでだろうか?
とにかく、「自分や家族などの限られた範囲で利用するために作品を入手し、自分で複製する行為は著作権法で認められている」と覚えておけばOKだと思います。
適切な引用
ルールを守った引用も著作権法の制限規定で認められています。引用するたびにいつも著作権者に確認なんてしていられないので当たり前と言えば当たり前ですかね。著作権者もいちいち対応していられないでしょう笑
では引用する際のルールは?
引用元を書いておけばOKと思っていると危険です。実は色々と条件があります(↓)
- 引用したい作品が公開されていること
- 自分の作品と明確に区別すること
- 自分の作品がメインであること
- 自分の作品と関連性があること
- 改変しないこと
- 出典を明記すること
「引用元を書く」というのは6つある条件のうちの一つに過ぎません。引用するためにはあと5つもクリアしないとダメですよ。
1、引用したい作品が公開されていること
何を当たり前のことを言っているんだと思われるかもしれません笑。公開されていて見つけたから引用しようとしてるんだろって言われちゃいますね。でも実は世の中には公開されていない著作物もたくさんあるんですよ。
例えば、手紙やメールの多くは公開されていない著作物です。
自分宛に書かれたものなので受け取った時点で自分のものになっている気がします。でも著作権は書いた人にあるんです。で、その手紙やメールを書いた人はその文章を世の中に公開していません。ということで、手紙やメールに書かれている内容をブログやツイッターに載せると著作権法違反になってしまうわけです泣
以前、どこかの大企業の社長が、退職した社員に「これまで一緒に働いてくれてありがとう。次の職場でも頑張って」といった内容のメールを送ったところ、受け取った元社員がツイッターに公開してしまったことがありました。たしか、著作権侵害じゃないかとリプが集まり炎上していたはずです。
2、自分の作品と明確に分けること
これは難しくないです。どこからどこまでが引用なのかはっきり分かるようにすればいいので、カッコで囲んだり、段落を変えたりすればOKです。
3、自分の作品がメインであること
これもそれほど難しくないです。
引用はおまけとして使おうということです。例えば、論文の内容のうち引用が8割だったら完全にアウトですね。自分の文章が9割、引用が1割などメインが自分の作品であることを守ればOKです。
4、自分の作品と関連があること
この要件は「引用する必要性があること」と言い換えると理解しやすいかもしれません。つまり、自分の作品と関係ないものを無理に引用するのはやめようということです。
ダイエット方法について説明している記事に、全く関係ない著作権の論文から引用を載せる必要はないですよね。そういう引用は著作権違反です。
5、改変しないこと
これは有名なルールですね。
引用するならそのまま引用し文意を変えないことが条件です。引用したい文章が長い場合は、意味が変わらないように注意しながら(中略)を入れて省略してください。文章そのものをいじって短くすると改変になってしまいます。
6、出典を明記すること
書く必要ないですね。これをしないと引用にならないですね笑
【豆知識】無断引用の禁止に法的拘束力は全くない
チラシや記事に「無断引用を禁じます」と書かれているのを見たことがあると思います。そう書かれると自分のブログなどで引用しづらいですよね。
でも実際は無断引用を禁止するという文言に法的な根拠や拘束力は全くありません笑
なぜなら、これまで説明してきた通り、ルールを守った引用は著作権法の制限規定によって許可されているからです。「無断引用の禁止」は情弱をカモにする脅しなので全く気にする必要はありません。しっかりとルールを守って無断で引用してください。
著作権法は文化の発展に寄与することを最大の目的として制定された法律で、引用行為は引用された作品(文化)を世の中に広める行為です。つまり著作権法はルールを守った引用を推奨しており、たとえ著作権者でも引用を禁止することはできません。
非営利目的での上演や演奏など
制限規定には、非営利目的の利用を認める項目もあります。
- 非営利目的であること
- 観客などから料金を受け取らないこと
- 演者に報酬を支払わないこと
これらの条件を満たすと著作権者に許可を得なくても作品を利用できます。例えば、文化祭で学生バンドがアーティストの曲を演奏しても著作権違反にはなりません。同じ理屈で、図書館は著作権料を支払わずに市民に本を貸し出しています。
とはいえ、非営利ならなんでもできるというわけでもありません。
例えば、基本的に無料のイベントだけど寄付金を払うことが事実上の強制に近い状態になっているという場合はアウトです。出演者にお車代を払うのもダメです(実費支給ならセーフらしい)。企業が完全無料で行うイベントであっても、広報目的であれば完全な非営利とはいえないのでアウトですね。
他にも色々と細かい条件はあるようですが、非営利かつ完全無料のイベントであれば基本的に大丈夫だと思います。
著作権法は文化の発展に寄与するために存在している
引用の部分で書きましたが、著作権法の目的は「文化の発展に寄与すること」です。
著作者に正当な対価を支払わずに無断で利用され続けるとクリエイターがいなくなって文化が衰退します。それを防ぐために作られた考え方が著作権であり著作権法です。
逆にいえば、著作権者にあまりにも強い権利を認めてしまい、文化の発展が阻害されないように著作権者の権利を制限することも著作権法の存在理由です。
ちょっと調べただけでも、権利者に確認せずに作品を使える方法がいくつも見つかりました。
著作権に関する事柄は触れないのがベストなのかもしれませんが、現代社会は著作物だらけです。関わらずに生活するのはほぼ不可能なので、概略と制限規定だけ把握しておくのがいいんじゃないでしょうか?
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